「植物を活けるための美しい鉢が欲しい」そんなシンプルな想いからこのプロジェクトは動き出しました。花を花瓶に活ける様に植物を鉢に活ける「いけばち」をRENは提唱しています。ikebachi potはそれを体現するためにどうしても必要なものでした。
─ 土 地 ─
長崎県の北東部に位置する波佐見町は磁器で有名な焼き物の町です。良質な磁器の原料が採掘される泉山磁石場が至近にあったことから磁器の生産が盛んになりました。波佐見焼は約400年の歴史を持ち江戸時代は「くらわんか」などの庶民向けの器を焼いていました。生活に根ざした日常使いの磁器を400年もの間作り続けてきた波佐見焼きは日本を代表する焼き物のひとつです。
─ 素 材 ─
磁器の原料である陶石は、有田焼きにも用いられ最高等級として知られる「天草陶石」を使用しています。そのなかでもより緻密で白色の際立つ部位のみを選抜し、粉砕し水のみを注ぎ出し捏ね続け泥状にされ生地となります。
─ 技 術 ─
製造を担う西海陶器株式会社は1946年創業、波佐見のビジネスを牽引する企業のひとつです。圧力鋳込みの石膏型により成型され数百度に及ぶ超高温ガス窯で丹念に焼き締められます。
ikebachi potは植物を活けるための鉢です。鉢の形状は古くから園芸で親しまれる伝統的な植木鉢を踏襲しました。あえて釉薬をかけないマットなビスク仕上げは、静かに植物の魅力を引き立ててくれます。あらゆる箇所が生き物の様に滑らかな曲面で構成され、ニュートラルでありながらつい触れたくなる普遍的な植木鉢が誕生しました。
Profile of Designer
角田陽太 Yota Kakuda
デザイナーコメント
ライン、サーフェイス、ソリッドとひとつひとつ丁寧にデザインしました。持ちやすい直径と重量、土の入れやすい口の形状にこだわりました。また、皿は付属品のようにみえたりノイズになったりしない意匠を形成することに成功できたと思います。
1979、年仙台生まれ。2003年、渡英し安積伸&朋子やロス・ラブグローブの事務所で経験を積む。2007年、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)デザインプロダクツ学科を文化庁・新進芸術家海外留学制度の奨学生として修了。2008年、帰国し無印良品のプロダクトデザイナーを経て、2011年YOTA KAKUDA DESIGNを設立。2016年、HUBLOT DESIGN PRIZEに日本人として初めてファイナリストに選出される。受賞歴はELLE DECORヤングジャパニーズデザインタレント、グッドデザイン賞、ドイツ・iFデザインアワードなど。武蔵野美術大学非常勤講師。
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